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女性に尿失禁が多いのには理由があった?原因や対処法まとめ

「咳やくしゃみをしたり、笑ったりしたときに尿失禁してしまった」「尿意が急にきて、トイレまで我慢することができずに尿失禁した」という経験がある女性は少なくありません。では、なぜ尿失禁は女性に多くみられるのでしょう。それにはちゃんと理由があるのです。こちらの記事では、尿失禁の種類や対処法についてわかりやすくまとめています。尿失禁のことについて知り、きちんと対処していきましょう。
尿失禁は女性に多い?
男性よりも女性の方が尿失禁しやすい理由は2つあります。
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尿道が直線で短い
男性の尿道は長く、S字にカーブになっているので尿失禁をしにくい状態となっています。しかし、女性の尿道は男性の尿道よりも短くて直線になっているため、少しお腹に力が入っただけで尿失禁してしまう場合があるのです。
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出産などで骨盤が開く
出産経験のある女性は、尿失禁しやすくなると言われています。出産の際は産道が広がることで、骨盤も開いてしまいます。骨盤が開くと、膀胱や子宮、腸などを支えている骨盤底筋が傷ついて伸びてしまい、臓器を支えることが難しくなるため尿失禁しやすくなるのです。また、出産を経験していなくても、加齢が原因で骨盤底筋が衰えてしまうことで、尿失禁しやすくなります。
女性によくみられる尿失禁の種類
尿失禁には種類があるのをご存知でしたか?尿失禁の中でも女性に多くみられる尿失禁の種類は、「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」「混合性尿失禁」の3つです1)。それでは、ひとつずつ確認していきましょう。
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腹圧性尿失禁
咳やくしゃみ、重い荷物を持ったときなど、お腹に力を入れた瞬間に尿失禁してしまうことを「腹圧性尿失禁」と言います。尿失禁で悩む女性で一番多いのが「腹圧性尿失禁」です1)。
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切迫性尿失禁
急に尿意がきて、トイレまでおしっこを我慢できずに、尿失禁してしまうことを「切迫性尿失禁」と言います。「切迫性尿失禁」が引き起こされる原因は、排尿をコントロールしている神経に異常をきたしてしまうことと考えられています。しかし、検査をしても原因がわからない場合もあるのです。
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混合性尿失禁
「腹圧性尿失禁」と「切迫性尿失禁」の症状が混合したものが、「混合性尿失禁」です。
最も女性に多いのは「腹圧性尿失禁」
先ほどもご紹介しましたが、女性の尿失禁で最も多いのが「腹圧性尿失禁」です。そこで、「腹圧性尿失禁」の症状や原因、治療法を詳しく説明していきます。

尿失禁してしまう場面
・咳をする、くしゃみをする、大声で笑う
・走る、ジャンプする、テニスやゴルフといったスポーツをする
・重いものを持とうとする、子供を抱っこしようとする
上記のように、お腹に力が入る行動をしたときに尿失禁してしまうのが、「腹圧性尿失禁」の症状です。
腹圧性尿失禁の原因
骨盤底筋が傷ついてしまうことや、伸びること、衰えてしまうことが原因で「腹圧性尿失禁」を引き起こしてしまいます。妊娠、出産や肥満、加齢などが骨盤底筋に影響を与えてしまう2)のです。
腹圧性尿失禁の治療法
腹圧性尿失禁を治療するには、主に3つの方法があります。
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骨盤底筋体操をする
まず1つ目の方法は骨盤底筋体操です。ゆるんだり、衰えたりした骨盤底筋を鍛える治療法です。尿道や肛門、膣に力を入れて締めたりゆるめたりする体操です。慣れてきたら、締めつける時間や体操をする時間を延ばしましょう。そうすることで、より早く骨盤底筋を鍛えることができます。
ただし、1人で骨盤底筋体操をしても効果を実感しにくいので、途中で断念してしまう方も多いです。そのため、医師からしっかりとした指導を受けながら骨盤底筋体操を始めることをおすすめします。 -
薬を服用する
医師に診察してもらい、診断に基づいて適切な薬を処方してもらいましょう。自分で骨盤底筋体操などのトレーニングをすることも大切なのですが、まずは医師に診察してもらいましょう。
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手術を受ける
尿道の後ろにメッシュテープを通すことで尿道を支えます。そうすると、尿失禁を防ぐことができるのです。手術の翌日から数日後に退院できることが多いです。
尿失禁がサイン?女性特有の疾患「骨盤臓器脱」について
「骨盤臓器脱」という病気をご存知ですか?一般的にあまり聞きなれない病気ですが、「骨盤臓器脱」の自覚症状として、不快感や排尿障害に加えて尿失禁があります。そのため、「骨盤臓器脱」について知っておく必要があります。
「骨盤臓器脱」とは
「骨盤臓器脱」とは、骨盤内の臓器が下がってしまい、膣から出てしまう病気の総称です4、5)。「骨盤臓器脱」の中には、膀胱瘤、直腸瘤、小腸瘤、子宮脱などがあります。どれも膣を支えている筋肉が衰えてしまうことで、臓器が下がってしまい引き起こされる病気です4)。 「骨盤臓器脱」を引き起こしてしまう原因は、加齢や経腟分娩、肥満、便秘などです。年代が高いほど発症しやすいのですが、若い女性でも「骨盤臓器脱」を発症してしまうことがあります。このように、尿失禁の原因には「骨盤臓器脱」の可能性もあるので、気になる方は病院で診察を受けましょう。
改善や予防対策を前向きに検討しよう
尿失禁は日常生活に支障がありますし、他の病気を知らせるサインの可能性もあるので、早めに対策をする必要があります。
自身で意識して対策する
軽失禁パッドの使用も大切ですが、それでは根本的な解決にはなりませんよね。先ほどご紹介した、骨盤底筋体操やウォーキングで鍛え、下腹部を温めましょう。また飲食物にも注意が必要で、香辛料やワサビ、グレープフルーツ、漬物のような酸味の強いものや炭酸飲料は膀胱を刺激しやすい6)ため、摂りすぎには注意が必要です。また、水分摂取を控えるだけで、尿失禁が治まることがあります。しかし、水分摂取を控えすぎると脱水症などの危険もあるため、1日1リットル以上~2リットル以下の水分摂取を目指しましょう7)。
病院へ行き、しっかりと治療を受ける
尿失禁のタイプによって対策や治療法が変わるので、1人で対策するのは限界があります。なので、病院に行って医師に診察してもらったうえで、自分でも意識してトレーニングや食生活を改善しましょう。中には「尿失禁のことを医師に相談するのが恥ずかしい」と思う方もいるかもしれません。
しかし、多くの女性が尿失禁で受診しており、診察も問診と簡単な検査だけの場合が多いので、心配しないで診察を受けてください。ただ、口頭で尿失禁の症状を伝えるのは少しためらいがありますよね。そんな場合は問診シートを利用しましょう。事前に問診シートのチェック項目に自分に当てはまるものを記入するだけなので、口頭で説明する必要がありません。問診シートは下記のリンクからチェックしてみてください。
女性に多い尿失禁の特徴を知って対策をしよう
「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」「混合性尿失禁」といったように、女性に多い尿失禁には種類があり、それぞれ特徴が異なります。咳やくしゃみをしたり重い荷物を持ったりしたときに、尿失禁をしてしまった経験のある方や、尿意が急にきて、トイレまで我慢できなかった経験がある方は対策を検討しましょう。また、他の病気のサインである可能性もあるので、まずは、医師の診察を受けましょう。
<参考文献>
1) 日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会 編: 女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版] リッチヒルメディカル株式会社: 64-65, 2019
2) 西井 久枝: 泌尿器ケア 18(4): 414, 2013
3) 加藤 久美子: 泌尿器Care & Cure Uro‐Lo 21(2): 214, 2016
4) 香川 征 監修: 標準泌尿器科学 第8版 医学書院:176, 2010
5) 加藤 久美子ほか: Prog Med 32(4): 869, 2012
6) 岡村 菊夫: モダンフィジシャン 34(6): 732, 2014
7) 永坂 和子: 泌尿器ケア 12(10): 955, 2007