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尿もれの原因や対処法は?尿もれが女性に多いのは理由がある

「くしゃみをしたら漏らしてしまった」「トイレに行くまで我慢できないことがあっ た」という尿もれを経験したことがある女性は多いのではないでしょうか。そのようなことがあっても恥ずかしくて、なかなか相談しにくいと思う方もいるかもしれません。そんな方は、まず、問診シートを活用すると、自分で簡単に症状を確認することができます。また、排尿に関する知識を蓄え、何が尿もれの原因なのかを知ることはとても大切です。それでは、まず尿もれの種類から確認していきましょう。
主な尿もれの種類は2つある
尿もれには「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」「溢流性尿失禁」「機能性尿失禁」の4種類がありますが、その中でも代表的なものが「腹圧性尿失禁」と「切迫性尿失禁(UUI)」です。自分がどちらに当てはまるかを考えながら、見ていきましょう。なお、この両方がある「混合性尿失禁」というタイプもあります。
腹圧性尿失禁1、2)
女性に起きる尿もれの多くがこの腹圧性尿失禁です。咳・くしゃみをしたときや大声で笑ったとき、運動をしたとき、重い荷物を持ったときなど、お腹に力が入ったときに尿もれしてしまう方は、腹圧性尿失禁である可能性が高いです。通常であれば、お腹に力が入ったとしても骨盤底筋が尿道を締めることで尿もれを防ぐことができます。しかし、加齢や出産などが原因で骨盤底筋がゆるんでしまい、尿道を締める力が弱まってしまった結果、尿もれが起きてしまうのです。
腹圧性尿失禁の対処法
まずは医師の診察を受けることが大切です。自宅でできる対処法としては、骨盤底筋を鍛えるというトレーニングがあります。症状が軽い場合は、自宅で正しい骨盤底筋トレーニングをすることで症状が改善することがあります。
切迫性尿失禁(UUI)3、4)
急に尿意が起きて、トイレまで我慢できずに漏らしてしまうという方は、切迫性尿失禁(UUI)である可能性があります。膀胱が自分の意志とは関係なく収縮してしまうことが原因で、おしっこを我慢することができずにトイレに行く回数が増えたり尿もれしたりします。また、冷たいドアノブや水に触れただけで漏れてしまうのも切迫性尿失禁(UUI)の特徴です。切迫性尿失禁(UUI)は過活動膀胱という病気の症状の一つです。その場合、膀胱から「尿が溜まった」という信号が脳に届き、脳から「尿を出す・出さない」という指令を出すというやり取りが上手くできなくなっていて膀胱が勝手に収縮してしまっている可能性があります。または、腹圧性尿失禁のときと同じく、骨盤底筋のゆるみが原因で過活動膀胱になってしまう場合もあります。
切迫性尿失禁(UUI)の対処法
過活動膀胱などの病気が原因である可能性があるので、医師の診察を受け、適切な対処をする必要があります。薬が処方される場合がありますが、薬で膀胱の収縮を抑えるだけでなく、医師と共に骨盤底筋を鍛えるトレーニングを行ったり、尿をなるべく我慢する膀胱トレーニングをしたりすることもあります。
注意点
「なんとなく対処法がわかったから自分でやってしまおう」と尿もれ対策を簡単に考えている方はいませんか?正しい対策ができていないと、尿もれの症状が改善しなかったり、悪化してしまう場合もあります。医師が処方した薬を飲み、医師の指導に従ってトレーニングをすることで、尿もれを改善することが期待できます。
日常生活から意識しよう
病院に通って尿もれの症状が改善したとしても、日常生活に問題があった場合、再発してしまう可能性があります。そのため、日常生活で意識すべき2つのことをご紹介します。

便秘を改善する
便秘になってしまうと、膀胱が圧迫されておしっこを我慢できなくなってしまうことがあります。また、骨盤底筋の締まりが悪くなってしまい、尿もれが起きてしまこともあるのです。便秘を改善するためには健康的な食生活が大切です。
健康的な体重を維持する
肥満気味の方は少しずつ、標準的な体重に戻すことも大切です。肥満も便秘と同じく、膀胱を圧迫し骨盤底筋を締めにくくしてしまいます。適度な運動と食事制限を継続して、時間をかけながら体重を落とすことをおすすめします。
男性より女性の方がなりやすい?
尿もれに悩む方は男性よりも女性が多いです。それには2つの理由があります。
出産したら骨盤底筋が弱まることがある
先ほど腹圧性尿失禁の説明にもありましたが、骨盤底筋が弱くなってしまう主な原因が出産です。出産時、赤ちゃんの頭は骨盤底に向かってくるので、骨盤底が圧迫されてしまいます。それだけでなく、お母さんもいきまなければならないので、ものすごい力がお母さんの体に負担をかけます。そうすると、筋肉が疲労してしまい、傷がついてしまいます。そのため、女性の中でも特に出産を経験した方は骨盤底筋が弱まり、尿もれが引き起こされやすくなります5)。
泌尿器の仕組みが違う
男性の場合は女性よりも尿道が長く、S字に曲がっているため尿が出にくい構造です。ただ、女性の尿道は男性よりも短く、真っ直ぐ下に向かっています。そのため、お腹に力が入るだけで漏れてしまったり我慢するのが難しかったりすることもあります。
男女で見る症状の割合
腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁(UUI)といった尿もれは女性によくみられますが、尿を出しにくいという症状は男性にも多くなります。ただ、男女関係なく年齢が高くなるに連れて排尿トラブルの悩みを解決するため、病院を受診する患者さんは増加します6)。
尿もれが気になりだしたらセルフチェック
尿もれが気になる方は問診シートを活用してみましょう。他人に相談するのが恥ずかしいという方も、尿もれの悩みを解決できるきっかけになるかもしれませんよ。問診シートにある各項目の頻度を確認することで、過活動膀胱(OAB)の疑いがあるかどうかがわかります。普段我慢することができていたとしても、頻度が多い方は注意が必要です。
過活動膀胱症状質問票(OABSS)のチェック項目
- 朝起きてから寝るまでに何回くらい尿をしたか
- 夜中尿をするために何回起きたか
- 急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがどれくらいあるか
- 急に尿がしたくなり、尿を漏らすことが何回あるか
という簡単な項目をチェックするだけなので、下記リンクにアクセスしてみてください。
排泄障害に対する知識をつける
大声で笑うことや、思いっきり運動を楽しむことができないのは辛いですよね。また、外出するときにはいつ尿意がくるかわからないという不安な状態が続くと、日常生活に支障が出てしまいますよね。このように尿もれが気になる場合は、病院を受診して適切な対処をすることをおすすめします。しかし、尿に関する悩みを他人に相談するということに対して抵抗感がある方は少なくありません。特に女性は尿もれが起きたとしても誰にも相談せず、自分の心の奥にしまってしまうこともあります。しかし、尿もれというのは何も恥ずかしいと思うことではありません。尿もれは、多くの女性が経験しています。まずは問診シートに記入して、それから病院できちんとした治療を受けて尿もれを改善しましょう。
<参考文献>
1) 日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会 編: 女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版] リッチヒルメディカル株式会社: 64-65, 2019
2) 医療情報科学研究所 編: 病気がみえる⑧腎・泌尿器第1版 メディックメディア: 305, 2012
3) 加藤 久美子ほか: 産婦人科治療 91(4): 420, 2005
4) 日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会 編:過活動膀胱診療ガイドライン[第3版] リッチヒルメディカル株式会社:154, 2022
5) 西井 久枝: 泌尿器ケア 18(4): 414, 2013
6) 本間 之夫ほか: 日本排尿機能学会誌 14(2): 266, 2003